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無性生殖の方が効率がいいのに、有性生殖が圧倒的に多いのはなぜか?

投稿日:2018年5月4日 更新日:

赤の女王 映画「アリスinワンダーランド」より

有性生殖は無性生殖より多大なコストがかかる

劇作家バーナード・ショーが、パーティーで美しい女優に言い寄られた時の話。女優が「私たちの子供を作らない? 私の美貌とあなたの頭脳を持った素晴らしい子が生まれるわ」と言うと、ショーは「私の容姿と君の頭脳を持った子ができたらどうする?」と答えたそうだ。

有性生殖はオスとメスの遺伝子をランダムに混ぜてしまう。ショーも女優も知性と美貌で成功しているんだから、なにも遺伝子をシャッフルするという危険をおかさなくても、自分のクローンを増やした方が確実に優れた子ができるはず。

有性生殖は無性生殖よりはるかに大変だ。まず、個体の半分をオスという「精子を注入する以外何の役に立たないもの」にする必要がある。オスにもメスにも生殖器を用意しなければならないし、そのオスとメスが出会うのも大変だ。メスを呼び寄せるためにピーヒョロと鳴けば捕食者に狙われやすくなるし、キャバクラへ行ってオネーチャンを口説くのも金がかかる。出会えてからもセックスという作業をしなければならないし、セックスすれば性病に感染する危険もある。こんな回りくどいことをするよりも、無性生殖で自分のコピーを増やす方がはるかに簡単だ。

実際、個体数を増やすだけなら、無性生殖の方がはるかに効率がいいそうだ。無性生殖を行う多細胞生物もいることはいて、代表的なものはタンポポやイモ類、イソギンチャクやヒトデetc(※特殊な条件の時だけ有性生殖を行うものもある)。しかし、それら無性生殖を行う種は全て「比較的新しく誕生した」という共通点がある。無性生殖を行う種は短期的には繁栄するが、長期的には必ず絶滅してしまう運命にあるのだ。

有性生殖は劣悪な遺伝子をひとつの個体にまとめて始末できる

有性生殖の一番の利点は、傷ついた遺伝子をひとつの個体に持ち寄って淘汰により始末してしまえる点だ。故障した2台の車があり、1台は変速機が壊れ、もう1台はエンジンが壊れていた場合、修理工は使える部品を組み合わせてちゃんと走る1台に仕上げることができる。壊れた部品だけを使った1台のガラクタを生み出すことにもなるが、それらは自然淘汰により生存できない可能性が高い。有性生殖はこの修理工のようなものなのだ。

マラーのラチェッド説

それ以外にも有性生殖のメリットについて生物学者たちはいろんな説をとなえてきた。中でも一番支持されているのは、アメリカの遺伝学者ハーマン・マラーの「マラーのラチェッド」説だ。遺伝子の変異の大半は有害なものであり、遺伝子が無傷の個体はわずかしかいない。ほとんどの生物種は環境の変化による大量死に何度も遭遇する。その時、一度でも有害な遺伝子を持った個体の割合が高くなると、その度にラチェッド(爪車)がひと刻みづつ動いていくように、不可逆的に有害遺伝子の割合が高くなっていき、いつかは絶滅に至るというものだ。逆に有性生殖なら遺伝子はシャッフルされるので、有害遺伝子ばかりの集団や無傷の遺伝子ばかりの集団にはなりにくい。だから大量死が起こっても、集団全体の劣化は免れる。

赤の女王説

「寄生虫の脅威から身を守る」という視点から有性生殖のメリットを唱えたのが、数理遺伝学者のウイリアム・ハミントンだ。寄生虫は寿命が短いため、自然淘汰によりどんどん進化する。また寄生虫は宿主の免疫系が「自己」と間違うようなタンパク質を放出し、宿主の免疫系をだますことができる。もし宿主がクローンばかりなら、寄生虫は1種類の免疫系さえだませれば、宿主集団内でいくらでも増殖できる。しかし宿主が有性生殖により絶えず「自己」を変化させていれば、寄生虫も変化しなければ生き残れない。この説は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に出てくる、猛然と走っているのに同じ場所にとどまっている赤の女王にちなんで「赤の女王説」と呼ばれている。宿主も寄生虫も、常に変化し続けなければならないということだ。

決定的な学説はまだない

「マラーのラチェッド」も「赤の女王」もあくまでも仮説であり、今現在、決定的といえる学説はない。しかし「マラーのラチェッド」と「赤の女王」の説を組み合わせると有性生殖の見返りが大きくなるというという説もあり、今のところ有性生殖のメリットの原因をひとつに決める必要はなさそうだ。

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