子育ての違いは、子供の性格や行動になんら影響を与えない

2018年6月4日

巷には育児書なるものが溢れている。どうやって育てれば子供を立派な人間に、幸せな人間にできるかは、パパやママの重大な関心事だ。

しかしひと口に「育児書」と言っても、その内容は千差万別だ。子供は優しく愛情たっぷりに育てた方がいいというものがあれば、厳しく厳格に育てた方がいいというものもある。これじゃ、どっちが正しいのか判断に困ってしまう。

1987年、双子の研究をしていたロンドン大学の行動遺伝学者ロバート・プローミンは「同じ家の子供が大きく異なるのはなぜだろう?」という問題を提起した。兄弟姉妹は同じ環境で同じ両親に育てられる。遺伝子も50%は同じだ。なのに兄弟姉妹で性格が違うということを、我々は経験的に知っている。この問題提起により「環境は本当に重要なのか?」という疑問が生じた。

行動遺伝学者たちは、家庭環境や育児の仕方が双子の性格にどう影響するかを長年、研究してきた。個々の研究は小規模なものだったが、ヴァージニア大学のエリック・タークハイマーがそれら全てを統合してメタ分析をしたところ、はっきりしたパターンが見えてきた。

親の育て方による違いはわずか2%、生まれ順による違いはわずか1%、遺伝的要因による違いが50%、残りはランダムな要因によるものとされた。

この「生まれか育ちか」の議論は加熱する一方だったため、アメリカ政府の出資で大規模な研究が行われた。あらゆる立場の研究者が参加し、双子以外も対象にされた。思春期の兄弟姉妹720組(双子や養子も含む)を選んで1988年から11年間に渡り成長を観察したのだ。子供への家庭の影響を調べるものとしては過去最大かつ詳細なこの研究は、改めて育児の重要性を裏付けるものになるだろうと思われた。

結果は意外なものだった。子供の性格や行動には遺伝が大きく影響することが示された。遺伝の影響を差し引いて結果を調べてみると、環境や親の育て方は子供に全く影響を与えていなかった。子供の性格や行動を決めるのは、遺伝的要因以外にはなかったということだ。

さらに興味深い結果が判明した。子供の個性と親の個性には相性があって、そのせいで親は子供への接し方が変わる、というのだ。親が子供に影響を与えるのではなく、子供が親に影響を与えていたのだ。

ほぼ同じ環境で18歳まで育った兄弟姉妹でも、性格や行動は全く違う。人間には生まれつき「個性製造機」が組み込まれているようだ。それは生涯を通じて働き続け、兄弟姉妹を全く違う人生に導いてゆく。

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