遺伝子&生物ネタ

多夫一妻制における夫の遺伝子的損得勘定

投稿日:2018年3月22日 更新日:

「一夫多妻」という形態は動物の世界ではありふれたことだし、人間でも未開民族などではよくみられる。もちろん日本だって、法的には妻は一人だが複数の女性を実質的な妻として囲っている男は多い。でも「多夫一妻」というのはあまり聞いたことがない。

多夫一妻制をとる動物はいないこともない。七面鳥に似たタスマニアオグロバンという鳥は、大部分が一夫一妻だが、多夫一妻もたまにみられる。メスは2羽のオスに交尾を許し、自分と子供のために食べ物を要求する。メス的にはたいへんおいしい話で、1羽のオスを夫にするメスは平均6.6羽の子どもを産むが、2羽のオスを夫にするメスは平均9.6羽の子どもを産む。

しかしオスの方は損な取引だ。夫が自分だけなら6.6羽の子どもを残せるのに、2羽いると(メスが産む9.6羽の半分として)4.8羽分の遺伝子しか残せない。2羽のオスが明らかに身体の大きさが違うケースでも、大きいオスは小さいオスを追い出したりしない。彼らはなぜこんな割が合わない夫婦生活を送るのだろう?

答えは、2羽のオスが兄弟だから。彼らは兄弟なので遺伝子を半分共有している。つまり、1羽分4.8羽の遺伝子に加え、もう1羽の夫の4.8羽分の遺伝子の半分、7.2羽分の遺伝子を残せることになる。なるほど、これなら彼らも得をする。

人間でも多夫一妻という形式はごく稀にだがある。チベットのある部族ではこの結婚形式が一般的にみられるが、やはり2人の夫は血の繋がった兄弟だ。人間の場合、一妻多夫になる主因は鳥と違って経済的な理由による。兄弟が一人の嫁を共有することで、畑などの財産が分散しないようにしているのだ。

一妻多夫だとどうしても女が余ってしまうように思えるが、そうした社会では新生児の女児を間引きして男女のバランスをとっているらしい。

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