科学&宇宙ネタ

レイカーツワイルの予言した仮想空間をセカンドライフで垣間見た

投稿日:2018年11月23日 更新日:

セカンドライフ内で日本人が集う場所『ジャパン広場』。中央に見えるのが『東京オリンピック』のPR動画。ここにオリンピックの広告を掲載するなんて、日本政府もやるじゃん。

10年前に衝撃的な未来を予言したレイ・カーツワイル

「シンギュラリティ」という概念を最初に提唱したレイ・カーツワイルの名著『ポスト・ヒューマン誕生~コンピュータが人類の知性を超えるとき』を読んだ。内容をかいつまんで言うと「科学は指数関数的に進歩する。そして、その進歩が『特異点』を迎えた時、人類は新しい局面を迎える」というものだ(かいつまみ過ぎか?)。

10年ちょっと前に出た古い本だが、その時点でカーツワイルが唱えた未来の姿は衝撃的だった。人間を凌駕する人工知能が出現し、ナノマシンが体内に入って人間を改造し、経験や人格がWEB上にアップロードされるetc。SFを超えるような未来予測には驚くばかりだ。そして何より凄いのは、現実がその予測に着実に近づいているということだ。

彼の予言?の中で一番興味を引いたのが、バーチャルリアリティの話だ。

あなたがヴァーチャルリアリティの世界に入りたいと思えば、体内にいるナノロボットが現実世界の情報をすべてストップし、ヴァーチャル環境に適した信号に置き換える。脳はその合成された信号を現実のものと全く同じように捉える。
WEB上には探検するにはもってこいのヴァーチャル環境が勢ぞろいするだろう。実在する環境を再現したものもあれば、物理の法則を無視した現実にはありえない空想世界もある。我々はそんなヴァーチャルな場所を訪れ、AIや本物の人間(両者に違いはない)を相手に、ビジネスから官能的な出会いまで、様々な関わりを持つことができる。
ヴァーチャル・リアリティの世界では我々は1つの人格に縛られなくなる。外見を変えて別の人間になれるからだ。複数の相手向けに、複数の身体を同時に使い分けることもできる。両親が見たあなたとガールフレンドが見たあなたが別人、ということもありうる。
出典:『ポスト・ヒューマン誕生~コンピュータが人類の知性を超えるとき』

セカンドライフでVR空間を経験してみた

う~ん、凄い話だ(汗)。とゆーことで、そんな未来のVR空間を少しだけ体験してみたい!と思った僕は『セカンドライフ』をやってみることにした。

セカンドライフはアメリカのリンデンラボ社が運営するWEB上のバーチャル空間で、2000年代後半に一大センセーションを巻き起こした。日本の企業も「ビジネスチャンスに遅れるな!」とばかり広告を出した。トヨタはセカンドライフ内に支店を作り、電通は土地を買い占めた。しかしそれは一時の熱狂だった。ブームはすぐに去り、セカンドライフはオワコン(終わったコンテンツ)というレッテルを貼られてしまった。

しかしそれから10年、セカンドライフはずっと存続し、少しづつ進化していた。日本人に不人気だったアバターのデザインも改良され、訪問者数も着実に増えているらしい。時代がやっとセカンドライフに追いついた~という感じかな。

セカンドライフの最大の特徴は「ミッションがない」ということ。訪問者はルールを侵さなければ何をしてもいいし、何もしなくてもいい。だから「やってみたけど、何をしたらいいかわからない」という理由で辞めていく人が多いらしい。僕も実際にやってみてそう思った。とにかく「何をしていいかわからない」のだ。

最初のうちは楽しかった。外国人と翻訳機能を使っておしゃべりしたり、知らない場所を探検するのは新鮮な体験だった。でも、しばらくすると飽きてくる。その時、目的がなければセカンドライフを続けるのは難しい。

セカンドライフを続ける理由

セカンドライフを続けている人の理由は、男女で全く違うことに気づいた。

女性の目的は、友だちと会話をしたりオシャレを楽しんだりすること。セカンドライフ内の通貨、リンデンドル(L$)は日本円の半分ぐらい。ショップには様々な服はもちろん、アバターから身体の部品まで、ありとあらゆるものが売っている。値段は無料~400L$ぐらいかな(400L$の洋服を買うと実際に200円かかるのだ。これには驚いた)。でも女性たちはセクシーなボディや流行の洋服を買い、それらを装着して友だちに見せたりして楽しんでいる。それは実際にファッションを楽しむ感覚とほとんど違いがない。あとはたまり場的な場所で、やってくる友だちとまったり会話したりしている。

逆に男性の目的はずばり、セックスだ。なんとセカンドライフ内ではセックスもできる!(僕はやったことはない…残念ながら)。適当な女性に声をかけ友だちになり、仲良くなったらラブホテルに行ってセックスする(公共の場所で裸になることは禁止されているので、セックスをするためのラブホが設置されている!)。バーチャル恋愛&セックス環境は驚くほど整えられている。

外国人が屋外プレイをしているのに遭遇したことがある。裸の女性が男に引っ張られていたのだ。僕がいることに気づくと、彼らはすぐにワープして消えてしまった(笑)。
ミクシーとかでも恋愛が流行したが、ミクシーの場合はリアルで会うことが目的だった。でもセカンドライフでは実際に会うことはほとんどないみたいだ。

ネット上の出会いで一番恐ろしいのは、ネカマ~いわゆる「女性だと思っていた相手が実は男だった」というヤツだ。でも実際にプレイしてみて「みんなリアルを全く気にしていない」ことに気づいた。相手が男だろうが女だろうが関係なし。セカンドライフ上ではアバターがすべてなのだ。バーチャルな空間でバーチャルな恋愛を楽しむのに、リアルがどうのこうの言うのはヤボなのだ。

たまに年齢を聞かれることがあるが、そういう人はたいていセカンドライフ暦が浅い。キャリア半年以上の人から年齢や職業を聞かれたことはない。

ネトゲ廃人はますます増えていく!

誰もリアルを気にしていないという経験は、すごく新鮮だった。将来、VRがますます進化していくのは間違いない。我々はバーチャルな空間に徐々に慣れていき、VR空間でリアルを気にする人は減っていくだろう。そして、つまらない現実から逃避してネットにのめり込む「ネトゲ廃人」はますます増えていくはずだ。そうなったら、誰が金を稼ぐのか? アンドロイドが働くのだろうか? アンドロイドが進歩するまでに、先進国の人間の多くがネトゲ廃人になり、それが社会問題になるんじゃないだろうか? 真剣にそんな心配をしてしまう。

意識さえあれば、身体はいらなくなる?

セカンドライフをやってみて思ったことが、もうひとつある。それは「身体って、いらないんじゃないか?」ということ。VRで素晴らしく感動的な体験ができたら、誰もリアルに戻りたがらなくなるだろう。しかし、リアル身体は飯を食べなければ維持できない。それなら「身体はなくてもいいじゃん」と思う奴が現れても不思議じゃない。ネット上に自分の意識をすべてアップロードすれば、身体はじゃまなだけだ。

僕はセカンドライフは続かないだろう。素敵な恋人でもできない限り(笑)。でも「ネット上で生きるってのはこんな感じかな?」って体験できたことは収穫だった。

僕も死ぬ前に、意識をすべてWEB上に移してもらおうかな? たぶん間に合うだろう。


●参考文献
シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき
レイ・カーツワイル著

レイ・カーツワイルの名著『ポスト・ヒューマン誕生』は、ぶ厚過ぎて読むには勇気が必要だ。そこで「内容をカットして薄くすれば売れるだろう!」とあざとく考えたNHK出版が、日本人に向けて出した一冊だ。科学に興味ある人なら読んでおいて損はなし!

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