高校生が合成生物を作ってツイートする日が来るのは近い?

2018年8月9日

DNAを自在に操る技術、CRISPR−Cas9

DNAを改変して新しい生物を作る「合成生物学」がすごことになっている。そのきっかけとなったのがCRISPR−Cas9(クリスパー・キャスナイン)だ。CRISPR−Cas9は、カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナとスウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエが2012年に発表した遺伝子改変技術で、細菌の免疫機能をヒントに開発された。細菌は過去に自分に感染したウイルスのDNAのパターンを覚えていて、同じDNAパターンを持つウイルスが侵入するとその部分を特殊な酵素で切断して殺してしまう。だから同じ酵素を使えば、DNAを任意の場所で切断できるという訳だ。

※CRISPR−Cas9が利用している特徴的な塩基配列「クリスパー」を発見したのは、九州大学の石野良純教授だ。石野教授は1987年、古細菌DNAに特徴的配列が規則正しく繰り返されていることを発見した。しかし当時は「なぜそうなっているのか?」はわからなかった。

CRISPR−Cas9の最も優れた点は、簡単でお金もかからないということ。従来の遺伝子改変技術は狙ったDNAを改変できる確率が極めて低いため、時間と費用がかかった。例えばある遺伝子の機能を調べる場合、その遺伝子の機能を止めたマウス「ノックアウトマウス」を作るのが一般的だが、1つの遺伝子をノックアウトするだけで1年~2年の時間と数百万円の費用がかかった。だからそれなりの規模の研究機関じゃなければ不可能だった。

ところがCRISPR−Cas9を使えば、まるでワープロを編集するがごとくDNAを書きかえれる。この技術は農作物の品種改良や医学などの幅広い分野で使われるようになってきた。人間はついに、生物を自由自在に生み出す「神の力」を手に入れたのだ。

最近、CRISPR−Cas9を使った遺伝子改変生物を作る会社が続々と現れた。彼らのクライアントは主に製薬会社で、動物実験に必要なノックアウトマウスを提供している。中には「夏の大セール!マウス複数購入で大幅割引!」なんて、怪しい通販会社みたいな宣伝をしているところもあったりする(苦笑)。

遺伝子改変生物が既存の生物を駆逐する!遺伝子ドライブ

ハーバード大学の研究員ケビン・エスベルトは、2003年にイギリス・インペリアル大学の進化生物学者、オースティン・バートが発表したある論文を目にした。その内容は「生物は自分の遺伝子を50%子孫に伝える。しかし遺伝子の中には50%以上の確率で子に受け継がれるものがある。この『遺伝子ドライブ』と呼ばれる現象を利用すれば、特定の遺伝子を生物種内で確実に広めることができるはず」というものだった。

この論文を読んだエスベルトは「CRISPR−Cas9を使えば『遺伝子ドライブ』を人工的に起こすことができる!」とひらめいた。そして2014年、エスベルトはその具体的な方法を発表した。

この『遺伝子ドライブ』はまさに画期的なものだった。例えば蚊にオスしか生まれなくなるような処理をして自然に放つと、その蚊が交尾した結果生まれる個体はすべてオスになる。これを何世代も繰り返せば、いつかはメスがいなくなって蚊は全滅する。

ガイドラインをいくら作っても、悪用しようと思う者に対しては意味がない

CRISPR−Cas9と遺伝子ドライブは劇的に生物環境を変えてしまうとても有益な技術だが、ある意味とても危険なものでもある。だから合成生物の作成には慎重を期する必要があり、ガイドラインを作らなければいけないという声が各界から出ている。もちろんガイドラインは必要だ。だがガイドラインを守るのは、まともな研究者たちだけだ。

例えばCRISPR−Cas9を習得した高校生が「ちょっと新しい生物でも作ってみるか」的なノリで、とんでもない生物を生み出す可能性は十分ある(「足が8本あるカエルを作ってみました!」なんて画像をSNSにアップするバカは絶対にいる。奴らはウケるためなら何でもするからだ)。面白半分にコンピュータウイルスを作ってばらまく若者は後を絶たない。コンピュータウイルスの代わりに生物をばらまく奴が現れても何ら不思議じゃない。

面白半分ではなく、明らかな意思を持って危険な生物を作る連中も現れるだろう。麻原彰晃やキム・ジョンイルやイスラム国の連中にとって、ガイドラインは無意味だ。

ウケ狙いの若者やテロリストが作った生物により、恐ろしい伝染病が蔓延したり一国の農作物が壊滅的被害を被ったりする可能性は結構高い思う。この危険極まりない状況に、人類はどう対処していくのだろうか?

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