科学&宇宙ネタ

我々は死を経験する最後の世代?人が死ななくなるのはいつ頃か

投稿日:2018年8月7日 更新日:

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人が死ななくなるのは時間の問題

20世紀を代表する物理学者のリチャード・ファインマンは「死が不可避である生物学的証拠はまだ見つかっていない。このことから私は、死は決して不可避ではないと考える。生物学者が死という人類に苦難をもたらしている要因を見つけ、万人が患うこの恐ろしい病を治せるようになるのも時間の問題だろう」と語っている。

分子生物学の進歩により、老化や死のメカニズムは相当わかってきた。ファインマンが言うとおり、老化や死の克服は「可能かどうか?」から「いつ可能になるか?」というステージに入っているようだ。

老化遺伝子の解明

近年、遺伝子と老化に関する興味深い研究結果が相次いで発表されている。カリフォルニア大学アーヴァイン校のマイケル・ローズは、ショウジョウバエの選択飼育により寿命を70%伸ばすことに成功した。この長寿バエは、抗酸化物質スーパーオキシドジスムターゼを通常より多く持つことがわかった。スーパーオキシドジスムターゼはフリーラジカルによるダメージを少なくする働きをする物質だ。

※原子や分子から電子が一個なくなると、その物質は「酸化」されたという。フリーラジカルは他の原子や分子と反応して、相手から電子を奪い取り、酸化させる力が強い分子。

1991年にはコロラド大学ボールダー校のトム・ジョンソンが、線虫で老化の原因と思われる遺伝子を特定してage-1と名づけた。その後、下等生物で寿命を伸ばす遺伝子がいくつか見つかっている。

人間の場合「寿命が長すぎて検証するのが難しい」という問題があるが、すでに老化に関係する可能性がある遺伝子は多数見つかっている。あと10年~20年もうすれば、老化の原因を正確に突き止められるようになるだろう。「2050年までには老化のプロセスを遅らせることが可能になり、150歳まで生きられるようになる」と科学者たちは予測している。

カロリー制限

細菌、昆虫からウサギ、犬まで、摂取カロリーを制限すると寿命が伸びるという研究結果がいくつも発表されてきた。食事を制限された個体では腫瘍や心臓病、糖尿病などの加齢に伴う疾患が減り長生きするのだ。中でも2009年に発表されたウィスコンシン大学の研究により、カロリー制限の効果は猿でも実証された。ある時点でのアカゲザルたちの生存率は、カロリー制限群が約60%、自由摂食群が約40%で、見た目もカロリー制限群の方が若々しく見えた。

※なぜカロリーを制限すると老化が遅れるかというと、生物は食糧が豊富にある時はエネルギーを生殖に使うが、食糧が乏しい時は生殖を中断し、代謝を減らしてエネルギーを温存する。将来、また生殖活動ができる日のために、とりあえず生き延びようとするのだ。

しかし人間の場合、カロリー制限をするのは簡単じゃない。食事は人間にとって楽しみでもある。何十年も味気のない食べ物ばかりでは、それこそ生きている意味がない。そこで科学者は、このカロリーと老化の仕組みを制御する遺伝子を探すことに力を注ぐようになった。

1991年、マサチューセッツ工科大学のレナード・P・ガレンテとハーヴァード大学のデイヴィッド・シンクレアは、酵母菌からカロリー制限の効果をもたらすSIR2という遺伝子を発見した。この遺伝子は細胞のエネルギー貯蔵量を感知し、飢えている時などエネルギーが少ない状況になると活性化する。ガレンテたちはマウスと人にもSIR2遺伝子と同じ役割を担うSIRT1という遺伝子を発見した。SIRT1はサーチュインというタンパク質を作る。

さらに彼らは、サーチュイン遺伝子を活性化するポリフェノールの一種、レスベラトロールを発見した。シンクレアによれば、サーチュインを活性化する物質は加齢が原因で起こる様々な病気からマウスを守っているとのこと。サーチュインによってこれらの病気を治療することができれば、医学に革命が起きるだろう。

老化を防ぎたいなら『ピノ・ノワール』を飲むべし

抗酸化作用の高いレスベラトロールは赤ワインに多く含まれている。赤ワインの中でも特に『ピノ・ノワール』に多い。身体にいい食物やサプリメントは巷に溢れているが、どれも科学的根拠に乏しい眉唾ものが多い。でもこの「赤ワイン」は本当に身体に良さそうな気がする。

細胞の寿命を決めるテロメア

テロメアは染色体の端にあり、細胞が複製を繰り返す度に短くなっていく。そして決められた回数複製されると、テロメアはほどけて消失する。すると細胞は「細胞老化」と呼ばれる状態となり、分裂を行わなくなる。この細胞の複製に上限を設けるというシステムは、発見した解剖学者のレオナルド・ヘイフリックにちなんで『ヘイフリック限界』と呼ばれている。

ところがガン細胞は、テロメラーゼという酵素を生成してテロメアが短くなるのを防いでいる。このテロメラーゼは人為的に合成できるのだが、この酵素を与えると細胞は死ななくなり、際限なく増殖するようになる。したがってテロメラーゼを使って細胞死を防ぐという治療は、ガン化しないかどうかを慎重に確認する必要がある。

※ヒトの細胞の分裂限界(ヘイフリック限界)は50で最大寿命は約120年、ウサギのヘイフリック限界は20で最大寿命は約10年、ラットのヘイフリック限界は15で最大寿命は約3年。

今世紀末には、人間の寿命は1000歳になる?

「今世紀末には老化の原因解明と医学の発達によって、人間は今の10倍は長生きできるようになる」と科学者の多くが予想している。不慮の事故により死亡することはあるだろうが、老化や病気ではまず死ななくなるのだ。それも、若々しい身体を保ったままで。

もしかすると我々は、死を経験する最後の世代になるかもしれない。

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  1. 匿名 より:

    やはり死というタイムリミットがある方が人生に輝きが出るので、死はあってしかるべきかなと思います。人間はいつか死ぬ、その当たり前の事実と向き合わないでだらだら生きていると人間はいつか腐ってしまうのではないでしょうか

  2. こうちゃん より:

    これも凄い話!病気や老化では死ななくなるなんてことは神への冒とくかもしれませんね。あと、生の対比としての死があるような気もしますので逆に生への執着がなくなり死亡原因の第一は自殺になったりしてね。科学や医学はいったいどこまでいくのでしょうか。

    • 管理人YG 管理人YG より:

      いつもコメントありがとうございます。
      > 死亡原因の第一は自殺になったりしてね。
      そうなるでしょうね。どれだけテクノロジーが発達しても、死にたい人は減らないんじゃないかと思います。
      テクノロジーの進歩が本当に人間を幸せにするかどうか?は疑問です。ユヴァル・ノア・ハラリも「農業がはじまったことで、人間は狩猟採集時代より不幸になった」と述べています。
      でも僕はテクノロジーの進歩を否定しているわけではありません。テクノロジーの進歩は誰も止めることのできない「宿命」のようなもので、それを「良い悪い」と批評するのは無意味だと思っています。

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