科学&宇宙ネタ

ポール・アレンの死去により、地球外知的生命探査SETIが大ピンチ!

投稿日:2018年10月31日 更新日:

若き日のポール・アレンとビル・ゲイツ【ImageCredit : IT media NEWS

地球外知的生命探査、SETI

地球外の知的生命が発する電波を受信しようとする試み、SETI(セチ)は本当に夢があるプロジェクトだと思う。「地球外知的生命がいるかどうかもわからないのに、そんなものが発する電波を受信しようなんて試みは金のムダ使いだ」と批判を受けることも多いSETIだけど、僕はムダだとは思わない。万が一、発見できれば、それこそ科学と人類の在りかたを根本的に変えてしまうほどのものなのだ。どれだけお金を使ってもやり続ける価値はある。

モリソンとコッコーニの論文がSETIの始まり

SETIの始まりは、1959年にコーネル大学の物理学者、ジュゼッペ・コッコーニとフィリップ・モリソンがネイチャー誌に発表した1本の論文だった。モリソンとコッコーニは、ある知性体が別の星の知性体に自分たちの存在を知らせようと思ったら、電波を使うはずだと唱えた。電波は比較的低コストでどこまでも遠くへ飛ばすことができるからだ。また「その周波数を決める際は、宇宙で何かしら意味を持った数値を選ぶだろう。それは宇宙に最も豊富に存在する水素が発する周波数、1420MHZの可能性が高い」と論じた。

Wow!シグナル(ワォ!信号)

1977年8月15日、モリソンとコッコーニの説にピッタリ一致する信号が、オハイオ州にあるビッグイヤー電波望遠鏡に届いた。当時、ビッグイヤーの技師は数日おきにやってきて、データをプリントアウトするとハードディスクの中身を消去していた。そのコンピュータのハードディスクの容量はたった1MB。この見込みの薄いプロジェクトにとって、データを永久保存できる予算などなかったのだ。技師から渡されたプリントアウトを見た天文学者のジェリー・イーマンは、1420MHZの狭帯域に強力な信号を受信していることに気づいた。驚いたイーマンは、そこに印をつけ、余白に「Wow!」と書き込んだ。

後に「Wow!シグナル」と呼ばれるようになったその強力な電波は1度きりで、その後、2度と観測されなかった。それから30年間の間、Wow!シグナルについて多くの科学者が原因を解明しようと試みたが、誰一人、原因を解明することはできなかった。人工衛星や宇宙船や飛行機が地上から発する電波と干渉した可能性も検討されたが、それらは全て否定された。

SETIに逆風が吹き荒れる

ブロクスマイア上院議員がSETIに「金の羊賞」を授与したのは、Wow!シグナルが地球に届いたわずか6ヶ月後のことだった。「金の羊賞」はアメリカ政府が出資したプロジェクトの中で「血税のムダ使い」とみなされるものに贈る賞だ。NASAの行うSETIのへのアメリカ政府の出資額は年間1500万ドルというつつましいものだった。にもかかわらずブロクスマイアはSETIへの資金援助を削減する修正案を議会に提出した。この時は、天文物理学者のカール・セーガンがブロクスマイアを説得し、SETIへの資金援助はなんとか継続することができた。

しかし1993年、ブライアン上院議員がSETIへの資金援助を打ち切る法案を議会に提出すると、今度は可決されてしまった。「何百万ドルもの予算をつぎ込みながら、未だ一体の宇宙人も捕獲できていません。火星人が大統領に謁見を求めてきたという話も聞かないし、UFOが連邦航空局に飛行許可を申請した例もありません」とブライアンはコメントした。この決定で、SETIへの公的資金援助は完全に終了してしまった。

SETIの活動を支えてきたポール・アレンが死去

ブライアン上院議員のせいで公的資金の援助が受けられなくなったSETIの活動は、シリコンバレーの企業家からの寄付で細々と続けられている。ヒューレット・パッカード社の研究開発部門の責任者、バーニー・オリバーが社主のヒューレットとパッカードを説得し、資金を提供するようになった。その後、マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレンが資金援助の中心となった。彼とアメリカ政府が出資し、SETI専用の望遠鏡『アレン・テレスコープ・アレイ』がカリフォルニア大学バークレイ校に建設された。しかし『アレン・テレスコープ・アレイ』は現在、国や州の資金援助が受けられなくなったことで資金不足に陥り、運用が停止している。さらに追い討ちをかけるように、2018年10月、ポール・アレンが非ホジキンリンパ腫のため死去した。今後、SETIの活動は大幅に縮小されることになりそうだ。

アレンとともに『アレン・テレスコープ・アレイ』に出資したマイクロソフト社のCTO、ネーサン・ミルボルドは「地球外知的生命が存在するという説には反対意見も多い」と前置きした上でこう語った。「1つだけ明らかなことは『アレン・テレスコープ・アレイ』のようなプロジェクトを支援し続けない限り、知的生命体発見の可能性はゼロだということだ」。

日本政府はこれまで、シグマ計画とか、国産検索エンジンの開発とか、クールジャパンとか、何の成果も出せないプロジェクトに多額の出資をしてきた。そんなものにお金を使うなら、SETIにでも出資した方がよっぽどマシだと思う。ま、頭の固い日本人は、こんなロマンチックなプロジェクトには絶対にお金を出さないだろうけど…。

-科学&宇宙ネタ


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

フロンティアスピリットを持つADHD遺伝子は、人類の存続に必要不可欠だった!?

マーズワン計画は、イギリスとオランダの団体が進める有人火星飛行プロジェクト。2026年に火星に人を送り込む予定だ(その後、到着予定が5年遅れとなり2031年になるという発表があった)。その大きな特徴は …

なぜ柿の種のピーナッツは下にたまるのか?粒状物質の不思議な性質

白く見える物質がピーナッツ。なぜピーナッツが袋の底付近に集まるかは、現代科学では未だ解明されていない。【Image Credit 亀田製菓】 固体でも液体でもない、砂の不思議な性質 砂は固体の粒ででき …

コップ一杯でヨーロッパが全滅!!史上最強の毒物、ボツリヌスH型

ロシア反政府活動家暗殺に使用された最強の放射性物質ポロニウム210 2006年11月、元ロシア連邦保安庁の職員、アレクサンドル・リトビネンコは、元KGBの職員と会い、紅茶を飲んだ。リトビネンコはロシア …

地球温暖化を防ぐために人類ができること

2017年には冬季の北極の氷が観測史上最小を記録した。北極の氷が夏には消えてなくなるのも時間の問題みたいだ。 地球温暖化は加速している 今年の夏の暑さは普通じゃない。やっぱ地球温暖化は進んでるんだなぁ …

被験者6人が次々に悶絶!ロンドンで起こった臨床試験史上最悪の事故

薬の開発に臨床実験は欠かせない。薬を1つ開発するのに、1万人の臨床試験が行われる場合もある。 以前は製薬会社が社内に臨床実験チームを持っていたが、現在、臨床実験はそれを専門的に行っている会社に外注する …