社会&歴史ネタ

ホッキョクグマの肝臓を食べた人たちに異変が!?ビタミンA過剰摂取の恐怖

投稿日:2018年5月30日 更新日:

北極海を探検する人たちにとって、ホッキョクグマは脅威だった。ホッキョクグマは船乗りが上陸した先々ではぐれた人間を襲い、むさぼり喰った。ホッキョクグマはちょっとやそっとじゃ死ななかった。銃弾を6発受けても倒れず、よけい猛り狂って人間を引きちぎった。

1596年、ウィレム・バレンツ率いる船団がオランダを出発した。彼らはロシアの北の海を抜けて中国に向かおうとしていた。

船団はスカンジナビア半島を超え、ロシアのノバヤゼムリャ島の北端にたどり着いた。その時、季節外れの寒波が襲った。船団は行く手を氷に阻まれ立ち往生してしまった。

船乗りたちは船を捨て、ノバヤゼムリャ島に上陸。流木を使って丸太小屋を作り冬を乗り切ることにした。厳しい寒さと一日中太陽が出ない日々は彼らを苦しめた。しかし最大の脅威はホッキョクグマだった。クマは小屋を包囲し、外に積んであった食糧を根こそぎ奪っていった。ホッキョクグマが小屋に侵入して殺されそうになったことも何度かあった。

彼らのホッキョクグマに対する怒りは頂点に達していた。ある日、彼らは侵入してきたクマ2頭を殺した。新鮮な肉に飢えていた男たちは、食べられる部分を全て腹に詰め込んだ。

ホッキョクグマの肝臓がたっぷり入ったシチューを食べた乗組員たちは、その後、経験したことのない身体の不調に陥った。発汗、発熱、めまいetc。数日経つと、唇や口などクマの肝臓に触れた部分がはがれ落ちはじめた。中でも3人が特に悪くなり、彼らは全身の皮膚がはがれ落ちた。

船乗りたちの異変の原因は、ホッキョクグマの肝臓に蓄えられていたビタミンAだった。

ホッキョクグマはアザラシを主食とする。アザラシは厳しい寒さに対処するため厚い皮膚と脂肪の層を身にまとっているが、それらを素早く形成するのにビタミンAを使っていた。もちろんホッキョクグマもビタミンAを必要とするが、どうしても食物連鎖の上方に位置する動物は毒物が濃縮されやすい。ホッキョクグマは生存に必要なレベルを超え毒性レベルに達するようなビタミンAを、肝臓に封じ込めていたのだ。

ビタミンAは未熟な細胞を猛スピードで一人前の細胞にする作用がある。さらにビタミンAは皮膚の内側の細胞を表面に這い上がらせる。表面に上がった細胞は自死し、皮膚を守る外層になる。この作用は病弱な細胞を取り除くのに有効だが、そのスピードがあまりに速いと皮膚がはがれ落ちてしまうのだ。

幸い重症の3人も死なずに快方に向かった。6月になり氷が溶けると、彼らは帰国のためボートで海に漕ぎ出した。途中、バレンツは病死してしまったが、船乗りたちはロシアの村にたどり着き食糧を得て、オランダに帰還することに成功したのだった。

エスキモーなど北方の民族は、ホッキョクグマの肝臓を食べてはいけないということを経験的に知っていた。しかしヨーロッパの人たちは、それを「迷信」だと思っていた。バレンツたち以外にも、ホッキョクグマの肝臓を食べて瀕死の状態になったヨーロッパ人は何人かいた。彼らは迷信のように思えることでも、時に真実が含まれていることを思い知らされたのだった。

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