科学&宇宙ネタ

コップ一杯でヨーロッパが全滅!!史上最強の毒物、ボツリヌスH型

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ロシア反政府活動家暗殺に使用された最強の放射性物質ポロニウム210

2006年11月、元ロシア連邦保安庁の職員、アレクサンドル・リトビネンコは、元KGBの職員と会い、紅茶を飲んだ。リトビネンコはロシア政府を公然と批判した後、イギリスに亡命した人物だ。元KGB職員と会ってまもなく、リトビネンコは嘔吐、胃の不調、倦怠感などの原因不明の体調不良に陥った。その症状は日増しに悪化、医師にも原因はわからなかった。彼はやがて毛が抜け落ち、赤血球が急激に減少し、3週間後に死亡した。

検視の結果、リトビネンコは10マイクログラム(まつ毛半分の重さ)のポロニウム210により中毒死したことが判明した。ポロニウムは半減期が138日と短いが、その間、強力なアルファ線を放出する。アルファ線はごく短い距離しか進むことができないので、この物質を瓶に入れて持ち歩いても暗殺者には害を及ぼさない。しかし体内に入れてしまうと、放射線による中毒死は免れない。捜査の結果、元KGBの乗った飛行機や滞在したホテル、リトビネンコが飲んだティーカップからもボロニウムによる放射線汚染が検出された(これだけ証拠が揃っていながら、ロシア政府は容疑者の引渡しを拒否している)。

致死量10億分の2グラムの毒素が発見された!!

ボロニウム210の致死量はわずか1マイクログラムで、世界一致死性の高い放射性物質と言われている。しかし、細菌の中にはもっと恐ろしいものもある。それが「H型」の毒素を出すボツリヌス菌だ。

2013年、カリフォルニア州公衆衛生局は、ボツリヌス中毒にかかった赤ちゃんの便のサンプルを受け取った。検査自体は珍しいものではなく、抗ボツリヌス血清を投与すれば生存率は高い。しかし、その時検出されたボツリヌス菌の毒素は、それまでとは違う未知のものだった。その新発見の毒素は「ボツリヌスH型」と名づけられた。

「ボツリヌスH型」の致死量はなんと2ナノグラム(10億分の2グラム)。赤血球の重さが10ナノグラムだから、その毒性の強さは凄まじい。最強の化学兵器であるVXガスでさえ致死量は10ミリグラムで、ボツリヌスH型の1000分の1未満だ。これをプールに1滴たらしてかき混ぜれば、そのプールの水をコップ1杯飲んだだけで絶命してしまう。毒素がコップ一杯あったらヨーロッパが全滅してしまう、そんなレベルなのだ。

研究者たちはその毒性の強さに衝撃を受けたようで、製造や兵器化を防ぐため、そのDNA配列を一切公表していない。


●参考文献
とんでもない死に方の科学~もし○○したら、あなたはこう死ぬ
コーディ・キャシディ&ポール・ドハティ著
飛行機に乗っていて窓が割れたら?バナナの皮を踏んだら?隕石に当たったら?エレベーターのケーブルが切れたら?etc。バカバカしくてありえないようなケースを想定し、どんな死に方をするかを「科学的」に解説した本だ。ユーモアのセンスが抜群でとにかく笑える。でも内容はちゃんと科学しているから面白くてたまらない。ちなみに、著者は序文でこう述べている。「現代科学で答えが出ていない場合は、推測にも頼った。だからそんな推測のシナリオ(宇宙ステーションからダイビングする、ブラックホールに飛び込む、火山の火口に落ちてみるetc)を試してみても、本書の通りにはならない可能性がある。そうなったら心からお詫びをする。重版の時に訂正するので、ぜひご一報を」。

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  1. こうちゃん より:

    まぢっすかー。トリカブトやふぐの毒なんてかわいいものですね。世の中、核で大騒ぎですが科学的な毒素の方が怖くないですか。実験も密室ででも出来そうだし一部のテロリストやキチガイが所有するかもです。核も含めて一気に大量の殺戮が出来るものがこの地球上にどんどん現れ、いつかどこかで偶発するのが怖いっす。

    • 管理人YG 管理人YG より:

      コメントありがとうございます。

      >一気に大量の殺戮が出来るものがこの地球上にどんどん現れ、いつかどこかで偶発するのが怖いっす

      ほんとですね。今までは巨大国家でなければ世界を滅亡させられなかったのに、今では個人で世界を滅亡させる力を持つ可能性がありますからね。
      僕がキムジョンイルだったら、核兵器なんか放棄して、ナノロボット兵器作ります。

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